
遺伝性の乳がんについて、日本乳癌(がん)学会は16日、がんになっていない乳房をがん予防のために切除することを「強く推奨する」と、学会の診療指針を改訂すると発表した。
現在の指針では、遺伝性乳がんの場合、がんを発症していない側の乳房の予防切除は、「検討してもよい」にとどまっている。
遺伝性乳癌とは
乳がんや卵巣がんの多くは、遺伝する病気ではありません。しかし、遺伝的な要因がはっきりしていて親から子に遺伝することのある「遺伝性のがん」があることも事実です。そのような遺伝性のがんは、乳がんや卵巣がん全体のうち約10%を占めると言われています。
ということは90%は遺伝的要因での癌ではないということにもなります。
乳がんは日本人女性で最も多いがんで、2013年の推計発症患者は約7万7000人。このうち1割程度は「BRCA」という遺伝子に変異があり、遺伝子変異がない人に比べ、高い確率で乳がんを発症しやすい。
*「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」のことをHBOC(Hereditary Breast and Ovarian Cancer)と言います。
遺伝性乳癌はどう判断する?
片方の乳房にがんが見つかった患者のうち、遺伝子変異が原因と考えられる場合、がんが見つかっていない側の乳房も発症リスクが高いと言われる。
乳がんの若年発症や、同時/異時・同側/対側乳がん、乳がんだけでなく卵巣
がんも発症した既往歴などが、HBOCを疑うべき臨床的な特徴です。また、複数の乳がんや卵巣
がんの家族歴が見られることもHBOCを疑う特徴となります。
遺伝性乳癌の判断基準としては、医療機関で家族の病歴などを含め遺伝カウンセリングで細かくチェックしてもらうというのがまず第一段階。
遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)が疑われる場合に遺伝子検査となります。
この場合の遺伝子検査とは、がんの発症に関与しているとされる「BRCA1/2遺伝子」の病的な変異の有無です。BRCA1/2遺伝子に病的な変異が認められる人は、そうでない人に比べて生涯の乳がん発症率が10~19倍になるとされています。
費用は
検査には保険が利かないため、費用は全額自己負担で1回20万〜25万円かかります。
検査で変異があったら
「遺伝子の変異があれば必ず癌になるとか、家族に遺伝子の病的変異があったら子供にも同じ様に遺伝子がある。」
と思ってしまいがちですが、そうとは限らないので必ず遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。
日本HBOCコンソーシアムのホームページからカウンセリングできる医療機関が見つけられます。カウンセリング費用は5000円程度とのこと。
手術費用と生存率
*英国の疫学調査では、予防切除をした場合の10年後の生存率は89%と、しない場合の71%より高かった。
*カナダの調査では、予防切除で遺伝子変異が原因の乳がんによる死亡者数を48%減少できるとの結果も出ているという。
*費用は片方の乳房の切除手術には約150万円がかかるという。
精神面、費用面での負担は大きい。
(出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00000063-mai-soci)
今回の改訂は
3年ぶりに改訂される指針では、遺伝性の乳がんと確認された場合、患者本人が希望し、カウンセリングの体制が整っていることなどを条件に、乳房予防切除を「強く推奨する」に引き上げる。がんになっていない側の乳房を予防的に切除すると、がんの発症リスクが下がったり、生存率が上がったりすることが分かってきたためだ。(出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00050062-yom-sci)
一方、遺伝子変異はみられるものの、がんを発症していない場合の予防切除について、新ガイドラインは推奨度を上から2番目の「弱く推奨する」にとどめた。米女優アンジェリーナ・ジョリーさんが発症前に切除手術を受けたことが話題になったが、乳がんリスクの低減効果は明らかな一方、生存率を上昇させるデータは確認できていないためという。
強く推奨される理由
上記の通り、「遺伝性乳がんの予防切除をした場合の10年後の生存率は89%と、しない場合の71%より高かった」という研究結果と「予防切除で遺伝子変異が原因の乳がんによる死亡者数を48%減少できるとの結果」も出ていることが第一の理由。
さらに乳がんは日本人女性の癌の中で一番多い癌で年間約1万3,000人が亡くなっており、これは乳がんを発症した人の30%程度にあたるといいます。
このことから予防できる癌として、遺伝性の場合はそれを早く知ること、その上で予防切除を強く推奨するということだろう。
最後に
アンジェリーナ・ジョリーさんが乳房切除をしたのもこの遺伝性乳癌の予防だったというのは有名なお話です。
日本でも積極的に取り組める体制が徐々に整ってきているのかと思います。
保険適用を国に働きかけていくという動きもある様で、早急に対応してもらいたい。
この様に病気を未然に防げることで、助かる命もある。女性自身まずは自分の状態をよく知り、セルフチェックをすることも重要かと思います。